【電気化学療法の実例③】 犬の棘細胞性エナメル上皮腫
千葉県習志野市奏の杜/津田沼/谷津の『奏の杜どうぶつ病院』院長の愛宕です。
今回は「棘細胞性エナメル上皮腫」を患いつつも、電気化学療法(ECT)を受けて下顎切除を行わずに寛解状態を維持できているワンちゃんをご紹介します。
プロフィール
年齢不明(保護犬のため)/シーズー/避妊済みの女の子
主訴
下顎の棘細胞性エナメル上皮腫
経過
過去に歯肉にできた腫瘤を切除し、エナメル上皮腫と診断されている。
かかりつけ病院にて根治のためには顎骨を含めた下顎切除術が必要と説明されているが、下顎を温存する治療法の相談のため県外から来院されました。
棘細胞性エナメル上皮腫は病理学的には良性腫瘍に分類されますが、局所浸潤性(できた場所で周囲に拡がる力)が強く、進行すると骨融解や顔面の変形を起こし、食事を摂るのが困難になることも珍しくない恐ろしい病気です。
※以前は棘細胞性エプリスやエプーリスと呼ばれていましたが、現在は棘細胞性エナメル上皮腫という名称に統一されています。
根治のためには顎骨を含めた広範囲の外科的切除が必要とされています。
今回は腫瘤が急激に大きくなってきたため来院されましたが、ご家族としては『顎を切除せずに残してあげたい』という強い希望があり、電気化学療法(ECT)での治療を行うこととなりました。
治療
腫瘤の減容積手術(見える範囲の腫瘍をなるべく切除すること)と同時にECTを実施しました。

▲ 治療前の腫瘤
顎を切除しないで済む範囲で腫瘤を切除し、患部にECTを実施しました。

▲減容積手術後
経過

▲ECT後50日の患部
ECT実施後50日の患部です。腫瘤は小さくなって表面にはきれいな粘膜ができていますが、まだ腫瘤が消えきっていなかったため、ご家族と相談の結果2回目のECTを実施することにしました。

▲2回目のECT後8日
2回目のECT実施後8日目の患部です。腫瘍が黄白色に変色し、破壊されているのがわかります。
処置後しばらくは口を気にして舌を出すような様子があるとのことでしたが、幸い食欲不振や強い痛みはありませんでした。

▲2回目のECT実施後78日
2回目のECT実施から約2ヶ月半が経過した患部です。
腫瘤は小さくなり、一見すると正常な歯肉と変わらない状態まで改善しました。
今後も再発がないかどうか定期チェックを行っていく予定ですが、その間も腫瘍に対する治療や投薬は必要ありません。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回ご紹介したワンちゃんはECTの副作用である患部の腫れや痛みがほとんど問題にならず、施術後1週間ほど痛み止めの服用はしてもらいましたが、それ以外は特に投薬や治療を行わずに普段通りの生活をおくることができています。
棘細胞性エナメル上皮腫の治療は外科的な切除が第一選択ではあるものの、下顎骨を切除するような大きな手術は躊躇されているご家族が多いと思います。
下顎切除を行わずとも、腫瘍を増大させずに付き合っていくことが可能な場合もありますので、1度ご相談いただければと思います。
電気化学療法について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
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