電気化学療法について③ 〜起こりうる副作用と施術の流れ〜
千葉県習志野市奏の杜/津田沼/谷津の 『奏の杜どうぶつ病院』 院長の愛宕です。
当院では、従来の方法では治療が困難な悪性腫瘍(がん)に対する治療として【電気化学療法】を実施しております。
今回は電気化学療法により起こりうる副作用と、当院での施術の流れをご説明します。
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電気化学療法で起こりうる副作用
①化学療法剤(抗がん剤)による全身的な副作用
電気化学療法で使われる抗がん剤は主にブレオマイシンとシスプラチンの2種類であり、通常の抗がん剤の投与量では骨髄抑制や腎障害などの副作用が問題になることがありました。
電気化学療法の場合は抗がん剤の投与回数が少ないこと、特にシスプラチンは投与量が非常に微量であることから、上記のような全身性の副作用が出ることは極めて稀です。
②電気化学療法特有の副作用
程度は様々ですが、以下のような症状が起きることがあります。
鎮痛剤や消炎剤を使うことで軽減できることがほとんどです。
・一過性の痛み/発赤/浮腫(むくみ)
・軽度〜中程度の皮膚炎
・電気化学療法を施した部位の皮膚壊死(約15%で発生)
皮膚扁平上皮癌の猫ちゃん(電気化学療法実施前と実施1週間後)。
腫瘍は縮小していますが、皮膚表面にびらん(火傷のようなもの)が起きています。
皮膚肥満細胞腫の猫ちゃん。 施術から1週間で腫瘍は縮小しましたが、皮膚表面にカサブタができています。
※画像はいずれも”Electrochemotherapy Treatmentcase with ELECTROVet EZ”より。
これを日本小動物がんセンターの小林先生は「ダウンタイム」(美容外科などで施術後に一時的に患部が腫れる期間=回復期間)と表現していました。
副作用のピークは1週間程度であることが多く、必要に応じて包帯や軟膏のおくすりで保護します。
③全身麻酔のリスク
厳密にいうと電気化学療法の副作用とは異なりますが、電気化学療法は全身麻酔下で行う処置です。
一般的な手術や放射線治療に比べれば短時間かつ浅い麻酔で行うことができますが、全身麻酔のリスクは個別に評価する必要があります。
施術の流れ
当院での一般的な施術の流れは以下のようになります。
①初診時
診察でどうぶつさんの状態、腫瘍の状態を確認し、電気化学療法の適応となるかどうか判断します。
また、電気化学療法で期待できる効果、リスク等を時間をかけて説明します。
※他院で検査や治療を行っている場合は可能であれば検査結果や治療内容がわかるものをお持ちください。
②麻酔前検査
事前に、あるいは施術当日に血液検査等を行い、全身麻酔を施す上でのリスクを評価します。
③施術当日
10時間以上の絶食の状態で午前の診察時間にご来院いただきます。飲水はして構いません。
処置は日帰り入院で行います。状態を確認後、お預かりをさせていただきます。
④電気化学療法を実施
お昼の休診時間中に全身麻酔を施し、電気化学療法を実施します。
麻酔時間はおおよそ20分前後です。
⑤ご帰宅
夕方の診察時間にお迎えにきていただき、ご家族にお返しします。
その後は1週間後を目安にご来院をお願いしています。
⑥追加実施の必要性の判断
処置後の一時的な腫れや炎症が落ち着いたら、追加実施の必要性を判断します。
一般的に手術後の顕微鏡的病変に対しては2回、肉眼的病変の場合は1〜4回程度実施することが多いです(おおよそ1ヶ月間隔で)。
次回は総まとめとして、電気化学療法のメリット/デメリットをお伝えします!
奏の杜どうぶつ病院は予約診療を行っております。
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奏の杜どうぶつ病院 院長
獣医腫瘍科認定医Ⅱ種 愛宕哲也