犬の移行上皮癌(尿路上皮癌)
こんにちは!院長の愛宕です。
今日はワンちゃんの膀胱がんの診断に利用できる検査のご紹介をします。
エコー画像:膀胱の三角部というところにできた腫瘤(しこり)
→のちに移行上皮癌という悪性腫瘍であることがわかりました。
犬の膀胱にできる腫瘍は「移行上皮癌」という悪性腫瘍(がん)が多いのですが、以前は慢性膀胱炎や良性のポリープと区別するのが難しい病気でした。
がんといっても、初期は頻尿や血尿という膀胱炎に似た症状のみであることが多いため、症状だけで腫瘍を疑うことが困難なためです。
また、腫瘍の初期診断には細胞診検査といって、腫瘤(しこり)の細胞を一部採取してきて顕微鏡で見る検査をすることが多いのですが、炎症を起こした膀胱の細胞と、移行上皮癌の細胞の見た目が非常に似ているのです。
近年になって、悪性腫瘍でだけ起きる遺伝子変異(BRAF遺伝子変異)を検出する検査が利用できるようになり、今まで細胞診検査だけでは診断できなかった腫瘍を早期に診断することができるようになりました。
※遺伝子検査といっても、よくイメージされる親から子に引き継がれるような遺伝子ではありません。
がんになってしまった細胞だけが持つ遺伝子を検出する検査であり、健康診断等でがんのリスクを調べる検査ではないのでご注意ください。
また、犬の膀胱移行上皮癌については、分子標的薬という新しいタイプの抗がん剤を使って以前より長期間コントロールできたというデータが東京大学の研究チームから発表されました。 S. Maeda, et al.: Sci Rep., 12, 4 (2022)
従来のお薬での治療より治療費がやや高額であることが問題なのですが、当院でもこのお薬を使った治療は可能です。
抗がん剤治療のお話はまた機会があればblogで配信していきますね。