犬と猫の糖尿病
最近当院ではワンちゃんネコちゃんの糖尿病患者様が増えてきました。
明確な自覚症状なく健康診断で見つかる場合や、他院でコントロールがうまくいかずセカンドオピニオンとして来院されるケースもあります。
今回はワンちゃんネコちゃんの糖尿病についてと、当院でおこなっている治療法の一部をご紹介します。
【症状】
初期症状として多飲多尿(水を飲む量やオシッコの量が増える)が認められます。
発症当初はそれ以外の症状はなく、元気や食欲も問題ないことが多いです。
この段階で気づいてあげられれば良いのですが、進行すると痩せてきたり重度の脱水症状や食欲低下が認められるようになり、治療をおこなわなければ命にかかわることもある恐ろしい病気です。
【診断】
血液検査で血糖値の上昇と、尿検査で尿糖の陽性反応を確認します。
一時的な血糖値上昇の可能性を除外するため、過去2週間の血糖値の平均を反映する『糖化アルブミン』という特殊な血液検査をおこなうこともあります。
【治療法】
ワンちゃんネコちゃんの糖尿病ではインスリン製剤の投与(1日2回ご自宅で注射する)が治療の中心となります。
人間と異なり生活習慣の見直しのみでは改善せず、飲み薬での血糖コントロールも困難であることから、ほとんどの場合はインスリンの注射が必須です。
必要なインスリンの量は個人差があることから、治療初期は1日に何度も血糖値を測定しながら、その子の状態に合わせたインスリンの種類や量を決定していく必要があります。
【血糖値の測定法】
① 採血による血糖値測定
3〜4時間ごとに採血を行い、血糖推移のグラフを作成します(血糖曲線)。
ご自宅で採血をするのは難しいことが多いので、治療初期は半日お預かり、あるいは入院下でインスリンの投与と血糖値の測定を行うこともあります。
しかし、動物の場合は緊張や興奮により一時的な血糖値の上昇がみられる場合がありご自宅での血糖値と必ずしも一致しないこと、頻回に採血すること自体のストレスが問題になります。
② 連続血糖測定器の利用
近年では、人間の糖尿病治療で使われている連続血糖測定器『Free style リブレ®︎』が動物でも利用できることが明らかになってきました。
500円玉くらいの大きさのセンサーを皮膚にとりつけ、専用のリーダーで読取ることで、ご自宅にいながら血糖値(正確には組織液中のグルコース濃度)を測定できます。
装着部位の毛を刈る必要はありますが、装着する際の痛みはほとんどなく、おとなしい子ならセンサー気にすることもありません(気にする子は洋服等で保護してもらいます)。
センサーを気にしていじってしまうことがなければ、最大14日間、血糖値を測定し続けることができます。
この装置が利用できるようになってから、細かい血糖値の変化を連続的に、ご自宅にいながら測定することが可能になり、飼い主様や動物さんの負担を減らすことができるようになりました。
当院ではこの『Free style リブレ®︎』による血糖測定とインスリン投与のアドバイスをおこなっております。
糖尿病のコントロールでお悩みの方がいらっしゃいましたら、気軽にご相談ください。
奏の杜どうぶつ病院 院長 愛宕哲也